あるトランスジェンダーの世界Marion.K

「女」を割り当てられて育ち「男」のように生きているあるトランスジェンダーの内面を記します。

「性同一性障害」と「診断」する医師との関係

大学生の頃、名を変更するために「性同一性障害」の診断を貰おうと決めた。調べると近くの大学病院には専門の精神科医がいて診断を受けられることが分かった。しかし紹介状がないと初診時に5000円余計にかかる。そこで、自分の通っている大学の保険センターに所属する精神科医に紹介状を書いてもらおうと思った。「性同一性障害」は専門外であるその医師との面接は、「性同一性障害」を私が説明するところから始まった。医師は、自分は幸い心と体の性が一致しているが興味があるから聞きたいと言い(私は「性同一性障害」を「心」と「身体」の性の不一致、と説明したつもりはないが)私にいろいろ尋ねた。医師は婉曲的表現を使って、マスターベーションはするのかと私に質問した。緊張していた私は大真面目に答えた。それがおかしなことだと気が付いたのは数年後だった。医師が興味の為に診断と無関係なプライベイトな質問をする。私は紹介状を貰うために答える。

紹介状をもらって「性同一性障害」を専門に扱う精神科医の診察を受けることになった。一通りの面接と検査を終え、私は改名するために診断が欲しいと医師に伝えた。医師は条件を出した。親に言うこと。私は嫌だと言った。なぜ私の名前を変えるのに、親が出てくるのか分からなかった。しかも私は成人している。しかし医師は「親と音信不通」でもない限り親に言うことが条件だと言った。譲らない医師に対して、診断書が必要な私が折れるしか無かった。親に伝えたことを次の診察で言うとすぐに「性同一性障害」の診断が下された。

生殺与奪を握る医師に対してどういう態度を取れば自分の望む応酬を得られるか私は知っている。医師と「被治療者」の間に権力の不均衡がある。